2018年2月26日。
スガさんの、記念すべきデビュー21周年の日に、中野サンプラザで『Hitori Sugar』が行われた。
チケットはSOLD OUT。
当日券の発売はなかった。
2階席だったけれど、大興奮・大満足の2時間だった。
本当にあっという間。
この最高の体験を、まだ記憶が鮮明なうちに文字に起こしておきたいと思い、PCに向かっている。
今回は、セットリストのネタバレ含みます。
スガさんと出会ってからの、私の過去11年間のネタバレも含みます(いらねぇ…)。
ちと、長文になるかと思いますが、よろしければお付き合いください。
開場30分前に、会場の中野サンプラザに到着。
冷たい風が吹く寒空の下、すでに開場を待つ人々の列が。
期待で手に汗握りながら、Walkmanでスガさんのお気に入り曲を何度もリピートして開場を待つ。
思い起こせば、スガさんとの出会いは11年前。
私はまだ高校3年生だった。
受験を控えながらも、アコギを抱え、尾崎豊の歌を叫び散らす、そんな日々を送っていた。
はじめてスガさんの名前を見たのは、ギターの教則本。
『夜空ノムコウ』の作詞者としてだった。
その教則本に、収録アルバムとして掲載されていたのは、スガさんの10周年を記念して発売されたシングルベストだった。
あまり音楽を聴く家庭環境ではなく、『夜空ノムコウ』もSMAPの曲というくらいで、しっかり聴いたこともなかった。
なぜ、あの時そう思ったのかは分からないが、私は「この人の歌を聴いてみたい」と思い、チャリを飛ばしてベストアルバムを買いに行った。
汗をかきながら家までチャリをこいで戻り、コンポにCDをセットする。
CDから流れてきた、スガさんの歌に、文字通り、心を鷲摑みにされた感覚は、今でも鮮明に覚えている。
いわば、運命。
あの瞬間を超える音楽体験は、私には、まだ、ない。
松任谷由美に「コーヒーみたいな声」と評された、ちょっとざらついたその声、独自の詞世界、「いつかスガシカオというジャンルを確立したい」と生み出される音。
全てが新鮮で、そして衝撃だった。
今は、まだ短い人生ではあるけれど、自分の人生をスガさんの歌にオーバーラップさせながら、苦み、酸味、甘みも含んだ「コーヒーみたいな声」を味わっている。
思い出に浸っていると、列は徐々に前に進み、会場の中へ…。
チケットをもぎってもらい、前に進むと、目の前に現れた21周年記念のオブジェ。
ハート型のバルーンに彩られたそれは、アイドルかよ!という印象。
毎度のことながら、名だたるアーティスト・関係者の方々から、お祝いのお花が届いていた。
今回は指定席で、会場に入る時間を気にする必要がないため、開演前の時間を利用して、グッズを購入しておく。
この日から発売、Hitori Sugarの序盤公演の音源を商品化した『LIVE BOOTLEG3』とクリアファイルを購入。
割と早い順番で会場入りしたため、購入した後の私の後ろには、長蛇の列が。
列に並ぶ人たちを横目で見ながら、会場へ。
席に座ると、あとは、ドキドキしながら、開場を待つのみ。
開演前の場内には、asgeir『Afterglow』が流れていた。
パッと照明が消えると、大歓声に包まれ、ステージ中央に向かって、スガさんが歩いていく。
「ハロー!東京ォー!」
第一声の後、「今日でデビュー21周年なんで、この曲からいくよー!」と早速、歌い始める。
【1.ヒットチャートをかけぬけろ】
【2.Party People】
デビュー曲からはじまる、21周年記念ライヴ。
ファンへの感謝の気持ちと、次のステージへ向けての新たなステージへ向かっていく決心が伝わってくる。
「Hitori Sugarは、ギター一本で弾き語るライヴなので、みんなの拍手が時にはドラムとなり、時にはギターになり、このライヴが完成するのです!」
こんなMCを挟みながら、次々と繰り出されるアコギ・ファンクチューン。
【3.Fesitival】
この曲は、個人的にも、とても思い入れのある曲だ。
James Blakeを想起させるダブステップ。
スガさんが前事務所を辞め、独立後の2nd配信シングル。
夏フェスに参加し、その時の想い・情景をそのままパッケージングした曲、ということだった。
デジタルな音なのに、温かみが感じられ、眼を閉じると、スガさんがステージ上でギターをかき鳴らしながら熱唱する姿がまぶたに浮かんでくる。
配信当時、日付が変わるのを待ってダウンロードして、Walkmanに曲転送し、ベランダでタバコをふかしながらウイスキー片手に、何度も繰り返し聴いたのを覚えている。
【4.見る前に跳べ.com】
【5.アシンメトリー】
名曲『愛について』の前には、こんなMCが。
「デビューする前にサラリーマンをやってて。結構ブラックな会社で、毎日毎日スーツ着て、すげー働かされてさ。いつも遅刻してたんだけど。4年半、5年間…勤めたのかな。どうしても音楽をやりたくて、会社にウソついて辞めたんだよね。その時点では、コンサートに引っ掛かったこともなかったから、なんもない状態だったけど、それでも、絶対音楽でメシを食っていくって決めてた。この曲は、ちゃんと曲として完成させたものとしては、人生で2番目にできた曲です。聴いてください、『愛について』」
私自身、大学生時代は色んなバイトを経験したけど、縁あって、スガさんがサラリーマン時代に働いていた会社に、2度ほどアルバイトで使ってもらったことがあるんです。
その時、たまたま好きなミュージシャンの話になり、スガさんの話をしたら、「ウチで働いてたんだよ」と。
サラリーマン時代から、仕事のデキる方だったようです。
いやぁ、面白い出会い。素晴らしき哉、人生。
【6.愛について】
暗転後、ちょこんとしたかわいいギターに持ち変えたスガさん。
ギタレレっていう、ウクレレに似たギターとのことで。
「ほら、こういうアメリカンな音がするんだけど、俺の曲で、ギタレレで演奏するようなアメリカンな曲がないって、買ってから気付いたんだよね。なので、暗い曲いきます!」
というMCに続いてはじまった次の曲。
7thアルバム『PAREDE』に収録の一曲。
「歌詞が太宰治っぽいね」と言われ、このタイトルになったそうだが、ライヴでの演奏が少ないながらも、好きな曲。
【7.斜陽】
この後、スガさんの歌の中に頻繁に登場するモチーフのひとつ、亡くなった父親について、こんなMCが。
「俺の父親は極度のコミュ障で、俺に対してもそうで。死ぬ時まで変わらなかったけど、きっと俺に対してこう思っていたんじゃないかと書いた曲。バンドkokuaでも評判だった曲。子供がいる親の方も、自分の子供のことを想いながら聴くと沁みるんじゃないかと」
ここから、kokua名義のアルバムに収録の曲が3曲続く。
【8.砂時計】
【9.黒い靴】
【10.Progress】
暗転後、なぜかステージ上に運び込まれるアンプ。
スガさんから、東京公演ならではのゲストが登場するというアナウンスが。
ざわつく会場。
続くスガさんのMCで、登場する人物が誰なのか察し、大歓声に湧く中、ステージにストラトを抱えて登場したのは、田中義人!
2007年からのスガさんのバンド「Funk Fire」の名ギタリストでありながら、右手首の局所性ジストニアという難病を患い、ステージから長らく退いていた。
田中義人/局所性ジストニアについての手記|スガ シカオ オフィシャルブログ コノユビトマレ Powered by Ameba
脳の手術を受け、成功したという話は聞いていたが、まさか今日、ここで拝めるとは。
しかも、復帰一発目のステージということで。
「プロのミュージシャンとして、ステージで涙を流すのって…」と言いながら、目には涙が浮かんでいるようだった。
私も義人のギターが大好きで、ソロ名義アルバム『THE 12-YEAR EXPERIMENT』は愛聴盤のひとつ。
未だにリピートしていて、生で演奏が聴けないのが、どれだけ寂しかったことか。
「俺も事務所を辞めたり色々あって、義人も大変な経験をして、お互いここまで来て。復活した義人とこの曲を、ここでやるのは、本当に意味のあることだと思います」
そんなMCの後、静かにはじまったこの曲。
【11.アストライド】
スガさんの第2のメジャーデビュー1stシングル。
マイナビ転職のCM曲にもなった。
「何度だって やり直せばいい」
昨年末のAsia Circuit、六本木での最終公演でもそうだったけど、この曲を聴くと、止めどなく涙が溢れてくる。
優しく背中を押してくれる感じがする。勇気づけられる。
私も、前職で色々あり、昨年7月から2社目で働いているが、未だに前職でのトラウマに悩まされることがある。
自分は、本当にこれでよかったのか…。
いつも自問自答する。
そんな時、心の支えになってくれる、大切な曲だ。
今日の2人のセッションは、本当にぶっつけ本番だったそうで。
演奏曲だけ伝えて、特に打ち合わせもなかったそう。
「Hitori Sugarだっていったのに、なんでエレキ持ってきたんだよ?」
という、スガさんの問いに、
「エレキ弾きたいなぁ、と思ったんで」と。
漫才のような掛け合いながらも、演奏していたギターは、病室・手術室にも持ち込んだストラトだそうで。
またステージに復帰したい!という強い意志が伝わってきた。
「演奏に関する打ち合わせはひとまず、MCのタイミングが上手く合わないから、次セッションする時は、MCの打ち合わせだけでも…」
そんな冗談の後は、スガさんの最新アルバム『THE LAST』収録、義人がギターレコーディングに参加した曲の演奏が続く。
【12.海賊と黒い海】
【13.ごめんねセンチメンタル】
【14.黄金の月】
2人のジャムセッション、最後の曲は、これ。
2ndシングルで、スガさんの数ある名曲の中で、一番好きな曲。
涙はすでに枯れてしまっていたけど、もう、どうにでもなってくれ…という気持ち。
義人のワウギターが沁みた。
【15.夜空ノムコウ】
【16.真夜中の虹】
ライヴも終盤に。
デビュー2年目にSMAPへ歌詞提供し、スガさんの代名詞となった『夜空ノムコウ』。
2016年6月に亡くなった、ハワイの友人スティーブさんに書いた曲でアルバム『THE LAST』収録の『真夜中の虹』と続く。
今日はみなさんにちょっと残念な報告をしなければなりません。|スガ シカオ オフィシャルブログ コノユビトマレ Powered by Ameba
しっとり聴かせる曲が続いた後は、たたみかけるようにクライマックスへ。
「新曲いきまーす!」
と、高らかに宣言した後、昨年の12月26日に配信リリースされた新曲『トワイライト★トワイライト』がはじまる。
【17.トワイライト★トワイライト】
ドライな打ち込みサウンドの隙間を、生のアコギ演奏が埋めてゆく。
最近のスガサウンドの真骨頂だ。
過去に「ファンク大好き、でもポップスも大好きというぼくにとって、その二つの音楽的融合は水と油を混ぜるくらい難しいのですが、ポイントになるのは切り替わる瞬間にどんなメロやリズムをブチこむかなのです」と話していたが、『夜明けまえ』や『フォノスコープ』のように、FunkyなAメロBメロから、サビで一気にポップに解放される。
三井アウトレットパーク 2017歳末&2018新春セールのタイアップで、CMで聴くと、普通のポップスにしか聴こえないけど、通して一曲聴くと、色を対比させた歌詞、耳に残る「コンビニのコーヒーだけじゃ 夢精慣れしたぼくは 目が覚めやしないみたい」というフレーズ。
決して、取っつきやすい曲ではない。
これを、「コーヒーみたいな声」でさらっと聴かせてしまうのが、スガ・マジック(笑)
【18.コノユビトマレ】
【19.19才】
続く怒涛のスガファンクで、本編は終幕。
〈Ancore〉
【20.フォノスコープ】
【21.午後のパレード】
大歓声に包まれて演奏された、アンコール2曲。
『午後のパレード』の大サビで、いきなり演奏を止め、今日一番の盛り上がりを煽るため、コーラス指南をするスガさん。
10周年を少し過ぎた頃、ホールツアーで「自分たちはスゴイFunkyなことをやってるつもりなのに、お客さんは席に座って聴いてる」と、自身の音楽性とファンとの間の意識のギャップに悩んでいたスガさん。
その不安を吹き飛ばす、というか、そんな不安もなく、笑顔でFunkしてるスガさんと、最高にFunkyな瞬間を共有できた。
「歌が主人公の曲をきちんとやりたい」と繰り返し話していた印象がある。
私も、スガさんの歌を、もっと聴きたい。
今年は制作期間に充てたいと宣言した後で、4月まではHitori Sugarで、「ツアー中のホテルでギター抱えて曲作れるかな、と思っていたけど、ライヴが上手くいったら飲むし、失敗しても飲むし、曲作ってるヒマないよね…」と話す、スガさん。
もぅ、どうでもいいっス。
とにかく、いつまでも、どこまでも、ついていきまス。
大好き、菅 止戈男(笑)