記憶の宮殿

僕は、記憶の宮殿を、自由に旅する。太宰治が、ソウルフレンド。

【日めくり太宰治】4月20日

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4月20日の太宰治

  1948年(昭和23年)4月20日。
 太宰治 38歳。

 四月二十日付で第一回配本の『太宰治全集第二巻虚構の彷徨』を八雲書店(やぐもしょてん)から刊行した。

最初の全集を刊行した八雲書店(やぐもしょてん)

 1948年(昭和23年)の今日、太宰にとって最初の全集の第一回配本が刊行されました。太宰の生前に全集が刊行されることになった経緯や、なぜ第二巻から刊行されることになったかは、1月21日の記事で紹介しているので、ご参照下さい。

 八雲書店(やぐもしょてんから刊行された、全集の第一回配本『太宰治全集』第二巻は、初版1万3,000部。装幀は、八雲書店の萩野悌二の手によるものでした。

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 八雲書店は、文京区森川町に本社を置き、1946年(昭和21年)12月から短歌雑誌「八雲」の発行所となっていましたが、太宰の全集刊行に合わせて、1948年(昭和23年)4月から「八雲」を新編集号と題して、文芸雑誌に衣替えし、太宰の小説女類を掲載しました。

 その後、太宰の死にあたっては、「八雲」七月号で「太宰治追悼特集」を組み、豊島与志雄亀井勝一郎・青柳瑞穂・伊馬春部清水崑の5名の追悼文とグラビアが掲載されました。
 さらに、「八雲」十一・十二月合併号では、「太宰治未発表作品特集」として遺稿特集を組み、『無間奈落』など初期の作品や、『斜陽』ノートを掲載するなど、作品の発掘に努めました。
 単行本としては、1949年(昭和24年)4月15日付で『地主一代』(未発表作品集)を刊行しています。
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 八雲書店は、短歌関係の書物の他に、岡本かの子石川達三の選集を刊行。単行本として、織田作之助『世相』武田泰淳『愛のかたち』などを刊行して、戦後文学に貢献した出版社でした。吉田精一永井荷風、岩上順一郎志賀直哉といった研究書も刊行しています。

 雑誌としては、「藝術」を刊行したほか、創刊して間もない頃の「近代文学」の発行所にもなっていました。
 「藝術」は新庄嘉章らが中心となって文学・美術・音楽の交流の場として刊行された豪華な季刊誌で、石川達三『ろまんの残党』島尾敏雄『単独旅行者』が掲載され、太宰も小説チャンスを寄稿しています。また、「八雲」同様に「藝術」でも、太宰の追悼特集が組まれました。

 1948年(昭和23年)4月、「近代文学」の発行所を降り、「八雲」を短歌雑誌から文芸雑誌へと方向転換したのは、より大衆に近い小説雑誌を出版の柱としていこうという意欲の現れとみることができます。『太宰治全集』の企画は、こうした「八雲」の改革とも連動していました。
 しかし、1948年(昭和23年)6月の太宰の死によって、「八雲」への寄稿は女類の1篇に留まることとなり、月刊雑誌としては、翌1949年(昭和24年)2月で休刊。その後、小説特集の別冊を2冊刊行して終わってしまいました。

 戦後の出版不況で、中小の出版社が次々と倒れる中で、組合抗争と税金攻勢とに巻き込まれ、八雲書店も姿を消しました。

  【了】

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【参考文献】
日本近代文学館 編『図説 太宰治』(ちくま学芸文庫、2000年)
志村有弘・渡部芳紀 編『太宰治大事典』(勉誠出版、2005年)
・山内祥史『太宰治の年譜』(大修館書店、2012年)
・田村茂 写真『素顔の文士たち』(河出書房新社、2019年)
 ※モノクロ画像は、上記参考文献より引用しました。
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