記憶の宮殿

僕は、記憶の宮殿を、自由に旅する。太宰治が、ソウルフレンド。

ロマネスク

【日刊 太宰治全小説】#19「ロマネスク」嘘の三郎(『晩年』)

【冒頭】むかし江戸深川に原宮黄村という男やもめの学者がいた。支那(しな)の宗教にくわしかった。一子があり、三郎と呼ばれた。ひとり息子なのに三郎と名づけるとは流石(さすが)に学者らしくひねったものだと近所の取沙汰(とりざた)であった。 【結句】嘘の…

【日刊 太宰治全小説】#18「ロマネスク」喧嘩次郎兵衛(『晩年』)

【冒頭】むかし東海道三島の宿に、鹿間屋逸平という男がいた。曾祖父(そうそふ)の代より酒の醸造をもって業(なりわい)としていた。酒はその醸造主のひとがらを映すものと言われている。鹿間屋の酒はあくまでも澄み、しかもなかなかに辛口であった。酒の名は…

【日刊 太宰治全小説】#17「ロマネスク」仙術太郎(『晩年』)

【冒頭】むかし津軽の国、神梛木村(かなぎむら)に鍬形惣助(くわがたそうすけ)という庄屋がいた。四十九歳で、はじめて一子を得た。男の子であった。太郎と名づけた。生れるとすぐ大きいあくびをした。 【結句】ちなみに太郎の仙術の奥義は、懐手(ふところで)…