衝撃の前作『THE LAST』から早3年。
待望の、スガシカオ 11th Alubum『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』がリリースされた。
前作は、前職を辞めて仕事をしていなかった時期に発売されたことを思い出し、少し感慨に浸ってみる。
最近は、イヤフォンで音楽を聴くことが多かったけれど、久し振りに押入れからヘッドフォンを引っ張り出し、音の洪水に溺れながら、初めての出会いに心躍らす。
きっと、このアルバムも、これから長い付き合いになるだろう。
今回は、アルバムを聴きながらの「一発書き」で、ファーストインプレッションを綴ってみたい。
【1.労働なんかしないで 光合成だけで生きたい】
『前人未到のハイジャンプ』を彷彿とさせるようなリズムから始まり、Duranのハードなギターフレーズで幕を開けるアルバムのタイトルチューン。
アルバムタイトルが発表された時には、「52歳になるスガさん、今になって『労働なんかしないで』なんて…(笑)」って思ったけど、そんな単純な訳もなく。
スガさんは、この曲について、以下のようにコメントしている。
「ずっと以前に書き留めておいた言葉でした。解禁した時点ではまだ誰もアルバムを聴いていないから、『人は働くために生れてきたんじゃない』みたいな作品だと多くの人に勘違いされてしまった(笑)。でもそうじゃなくて、表題曲では人の幸福感についての問い掛けを歌っています」
「あなたはいま幸せですか?」「あなたはなにを望みますか?」
何度も問い掛けられる。人によって幸福の定義は違う。ハードなサウンドの中で、色々と考えさせられる。
【2.遠い夜明け】
テレビ東京で放送された『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!』の主題歌だった。最終回には、スガさんもゲスト出演してました。
例えば傷つき 泣いて眠る夜も
君のことを 誰かがみまもってる
僕らが強敵に 立ち向かう朝も
君は一人じゃない 誰かが見ていてくれる どっかで
安易に「僕が君のそばにいるよ」とは言わないけれども、確実に背中を押してくれる。
日常に疲れた自分を、静かに元気付けてくれる。
【3.あんなこと、男の人みんなしたりするの?】
てっきり、スガさんお得意のエロチューンだと思ってました。ごめんなさい。
君のすぐそばで 髪に触れるくらい
全部を知りたい 君を傷つける奴ら
わたし許せないんだ 許せないんだけど
何にもできない自分のこと 一番許せないんだ
『斜陽』と近い匂いを感じる、ヒーローになりきれない主人公の話かな。
【4.am 5:00】
「あれ?このギターの音は…?」と思ってクレジットを見ると、田中義人!
この人のギター、好きな音。
スガさんのウィスパーボイスで紡がれる、朝のまどろみを綴った優しい歌。
優しく物語が紡がれていく中で、
いつもぼくをダメにする 心の中の黒い悪魔を
突き殺すような強い武器をひとつ
どうかぼくにください
こんな強烈ワードが、さらりと歌われるところ、さすが。
【5.おれだってギター1本抱えて 田舎から上京したかった】
ハードなイントロは、前曲とはアプローチの異なる義人のギター。
東京生まれで「都会的な」と形容されることの多いスガさんの、田舎に憧れるコンプレックスを歌った歌。
「渋谷区初期衝動2丁目3₋2のマンション」や「貧乏で卑屈な下町で育った不良債権野郎」といったキラーフレーズがゴロゴロ。
腐って生まれてきた不良債権のガキは
すぐ前が首都高で 排気ガス吸って
こんな声になって 歌をうたっています
【6.ドキュメント2019 feat.Mummy-D】
『はじまりの日 feat. Mummy-D』『ドキュメント2010 ~Singar VS. Rapper~』に続く、3曲目のMummy-Dとのコラボソング。
人力エレクトロ、ミディアムパーティチューンだった以前の2曲とは打って変わって、テンポが速く、また違ったテイストの曲。
畳みかけるような怒涛の展開の中に、歌うことに対する熱い想いが垣間見える。
【7.スターマイン】
「ある時、街を歩いている人たちや電車に乗っている通勤通学の人たちを見て、『この人たちのイヤホンで流れたら心地よい曲って、どんな曲だろう?』と考えた。すると『スターマイン』という曲が生れました」
「俺はこれまで『聴いてもらうため』だけに曲を作ってこなかったし、できあがった音楽を、リスナーがどんな場面でどう聴いてくれるかも、『おまかせします』というスタンスでした。でも今回、初めて自覚的にリスナーの顔を思い浮かべて曲を作りました」
希望と不安が入り混じった、青春時代を思い出す歌。
思わず涙がこぼれそうになった。
最後のフレーズが、心の中で永遠にリフレインしている。
【8.黄昏ギター】
NHK『プロフェッショナル』の主題歌『Progress』を演奏するKokuaにストリングスを加えた、豪華メンバーで演奏される。
もう今は会えない『君』について思いを馳せる歌。
どこか懐かしいサウンド。
後悔しても戻ってこない、青春の歌。
自分自身、過去の色々な思い出が、次々とオーバーラップしてくる。
【9.マッシュポテト&ハッシュポテト】
懐かしい!久し振りに復活のFamily Sugarによって演奏されるファンクナンバー。
アルバム収録曲の中で、唯一キーボードがクレジットされている曲。森さぁ~ん!!
間奏のキーボードのフレーズは、ハービー・ハンコックを思い出させる。
松原さんのベースが、ブリブリ気持ちいい。
何より、歌ってるスガさんが気持ちよさそう。
想いを寄せる相手へのひねくれた感情。最後は自分の幸せを願う歌詞もファンキー(笑)
【10.深夜、国道沿いにて】
フォークソングっぽい、ザクザクしたギターで始まる、卒業ソングっぽい展開をしながら、2番に入ると意外な形で急展開。
ラーメンを中心に、何ともいえない後味を残してくれる、アルバムのラストソング。
怒涛の42分9秒。
スガさんも「キーボードを感じさせないアルバム」と言ってたけど、これまでにないくらい、アルバム全体にホーンがフィーチャーされている。
ギター、ベース、ドラム、ホーン。全ての楽器が、今までにないくらい主張し合い、新たなサウンドを紡ぎだした印象を受けた。
温かくて、どこか懐かしい雰囲気もありながら、既存の枠には収まらず、前作とは完全に異なる「新たなスガサウンド」を見た気分だ。
当分は、ヘッドフォンを被り、音の洪水の中に溺れていたい。そんな気持ちにさせてくれるアルバムだった。
労働なんかしないで 光合成だけで生きたい(初回限定盤 CD+DVD)
《コメントは以下から引用しました》
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