記憶の宮殿

僕は、記憶の宮殿を自由に旅する。太宰治がソウルフレンド。

【日めくり太宰治】4月18日

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4月18日の太宰治

  1927年(昭和2年)4月18日。
 太宰治 17歳。

 弘前高等学校の入学式が挙行され列席。

太宰、弘前高等学校に入学

 1927年(昭和2年)3月17日から23日まで、官立弘前高等学校の第二班入学者選抜試験が、24日から25日まで、体格検査が実施されました。その後、4月11日、第一学年入学者発表があり、太宰は合格しました。
 太宰の第一志望は第一高等学校で、弘前高等学校は第二志望でしたが、両方を受験した結果、得点が足りず、第一高等学校は不合格でした。ちなみに、「第一高等学校」とは、現在の東京大学教養学部および、千葉大学医学部、千葉大学薬学部の前身となった旧制高等学校で、「旧制一高」とも呼ばれます。
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■官立弘前高等学校校舎

 4月18日、弘前高等学校の入学式が行われ、太宰も出席しました。
 太宰は、文科甲類に入学。文科甲類は、第一外国語を英語、第二外国語をドイツ語とし、2クラスありました。
 ちなみに、文科乙類は、第一外国語をドイツ語、第二外国語を英語とし、1クラスでした。文学・哲学系を希望する学生は、比較的乙類に多く、甲類には、官吏等を目指す学生が多かったそうです。

 入学試験の成績に依り、文科甲類1年、1クラス41名のうち、実際の入学者の成績上位者から並べた席次で、第14席を占めました。当時の官立高等学校では、文字通り成績順に座席が決められていました。

 また、当時、弘前市内からの通学者以外の新入学生徒は、寮生活をする規則になっていましたが、太宰の母・夕子(たね)の意図もあり、「病弱ノ為」と偽って入寮せず、津島家の縁戚にあたる、弘前市富田新町57番地にある藤田豊三郎方に止宿し、そこから通学しました。 
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■旧藤田家住宅(弘前市指定有形文化財 都市計画で解体される予定でしたが、県立青森中学校以来の太宰の後輩・小野正文の呼びかけで、2000年(平成12年)4月に「弘前太宰治下宿保存会」を結成。市民運動が実を結び、移築されて、2006年(平成18年)4月から「旧藤田家住宅太宰治まなびの家」として無料公開されています。

 藤田方では、二階六畳間を居室とし、出窓の部分に机と椅子を、さらに部屋の中央に座り机を置き、周囲に書架を並べて生活しました。
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■旧藤田家2階の太宰が下宿していた部屋 2019年8月、著者撮影。

 当時、弊衣破帽、高下駄の高校風俗(いわゆるバンカラ)の中で、太宰は、編上げ靴に新調したマントを羽織って通学。級友たちに「変り者」の印象を与えたそうです。

 入学後、間もない頃から、外国人教師・Henry George Percy Bruhlが、英語の授業時間最初の15~20分くらいで、自由作文“Japanese short story”を即席で書かせ、提出させました。
 当時のノートには、” KIMONO”、”A very brief history of his first half life”などが書かれており、P.Bruhlから、Good、Most Excellent、Excellent、Very goodなど、高い評価を与えられています。
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■” KIMONO”
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■”A very brief history of his first half life
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■”我が国の人口問題”

 太宰の英作文の成績は、学級内最優秀だったそうです。太宰は、これらの答案を、生涯手もとに置いていました。

 太宰は弘前高等学校への入学当初、規則正しい生活を送って学業に励み、第一志望だった第一高等学校の再受験を本気で考えていたそうです。
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 【了】

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【参考文献】
日本近代文学館 編『図説 太宰治』(ちくま学芸文庫、2000年)
志村有弘・渡部芳紀 編『太宰治大事典』(勉誠出版、2005年)
・山内祥史『太宰治の年譜』(大修館書店、2012年)
・『太宰治生誕110年記念展 ―太宰治弘前―』(弘前市立郷土文学館、2019年)
日本近代文学館 編『太宰治 創作の舞台裏』(春陽堂書店、2019年)
・田村茂 写真『素顔の文士たち』(河出書房新社、2019年)
 ※画像は、一部を除き、上記参考文献より引用しました。
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