1月12日の太宰治。
1944年(昭和19年)1月12日。
太宰治 34歳。
1月10日から13日まで、熱海の山王ホテルに滞在して、八木隆一郎、如月敏とともに、「佳日」の脚色に当たった。
太宰と映画
この年の1月3日、東宝プロデューサー山下良三が、太宰宅を突然来訪。『佳日』映画化の申し入れがあり、承諾しています(映画タイトル「四つの結婚」)。
■映画「四つの結婚」撮影現場で、スタッフと。前列右より江川宇礼雄、入江たか子、太宰、山根寿子、高峰秀子。後列右より青柳信雄監督、清川荘司、山田五十鈴、河野秋武、山下良三プロデューサー、志村喬。
太宰は映画が好きだったようで、太宰と映画について、次のように書かれています。
檀一雄『小説 太宰治』には、「檀君。こんな活動を見たことない? 海辺でね、チャップリンが、風に向って盗んだ皿を投げるんだ。捨てたつもりで駆け出そうとすると、その同じ皿が、舞い戻ってくるんだよ。同じ手の中に、投げても投げても帰ってくるんだ。泣ける、ねぇ」と太宰が語る場面があります。
太田治子『明るい方へ』には、「新宿の武蔵野館でシモーヌ・シモン主演のフランス映画『乙女の湖』を一緒に観た。」と、太宰と太田静子が一緒に映画を鑑賞する場面があります。
太宰が『人間失格』執筆時に滞在した大宮でも、映画館に足を運んでいたそうで、この時観ていたのは邦画。太宰は近眼だったため、決まって一番前の席に座っていたといいます。
ちなみに、太宰が通っていた映画館「日活館」は、『男はつらいよ』で有名な渥美清が初舞台を踏んだ場所。旅芸人の父を持つ友人に誘われて幕引きのバイトをしていた渥美は、セリフもない通行人役として初舞台を踏んだそうです。1946年(昭和21年)、太宰が大宮に滞在する2年前のことです。
また、太宰作品は何度か映画化もされています。
生前に映画化された作品としては、1944年(昭和19年)9月に東宝が映画化した『佳日』(「四つの結婚」)と、翌1945年(昭和20年)に大映が映画化した『パンドラの匣』(「看護婦の日記」)があります。
■「看護婦の日記」主演の関千恵子と。
太宰の死後には、『
また、太宰治生誕100年を記念して、2009年から2010年にかけて『斜陽』(秋原正俊 監督、佐藤江梨子 主演、2009年)、『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』(根岸吉太郎 監督、松たか子・浅野忠信 主演、2009年)、『パンドラの匣』(富永昌敬 監督、染谷将太 主演、2009年)、『人間失格』(荒戸源次郎 監督、生田斗真 主演、2010年)が映画化されています。
さらに、太宰治生誕110年だった、昨年2019年には『人間失格 太宰治と3人の女たち』(蜷川実花 監督、小栗旬 主演、2019年)が公開され、今年2020年2月14日には、『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(成島出 監督、大泉洋・小池栄子 主演)の公開も控えています。
【了】
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【参考文献】
・檀一雄『小説 太宰治』(岩波現代文庫、2000年)
・日本近代文学館 編『図説 太宰治』(ちくま学芸文庫、2000年)
・志村有弘・渡部芳紀 編『太宰治大事典』(勉誠出版、2005年)
・山内祥史『太宰治の年譜』(大修館書店、2012年)
・太田治子『明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子』(朝日文庫、2012年)
・滝口明祥『太宰治ブームの系譜』(ひつじ書房、2016年)
・田村茂 写真『素顔の文士たち』(河出書房新社、2019年)
※モノクロ画像は、上記参考文献より引用しました。
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