記憶の宮殿

僕は、記憶の宮殿を自由に旅する。太宰治がソウルフレンド。

人間失格

【日めくり太宰治】4月29日

4月29日の太宰治。 1948年(昭和23年)4月29日。 太宰治 38歳。 筑摩書房主古田晁(ふるたあきら)の計らいで、大宮市大門町三丁目百三番地の小野沢清澄方の奥の間の八畳と三畳との二間を借り、三畳の間を仕事部屋として「人間失格」の「第三の…

【日めくり太宰治】3月8日

3月8日の太宰治。 1948年(昭和23年)3月8日。 太宰治 38歳。 前日3月7日から、眺望のいい起雲閣別館に滞在。3月8日から、外部との交渉を断って、「人間失格」の執筆に専念した。「山のテッペンでカンヅメには好適」の場所であった。 起雲閣…

【日刊 太宰治全小説】#262「人間失格」あとがき

【冒頭】この手記を書き綴(つづ)った狂人を、私は、直接には知らない。けれども、この手記に出て来る京橋のスタンド・バアのマダムともおぼしき人物を、私はちょっと知っているのである。 【結句】「私たちの知っている葉(よう)ちゃんは、とても素直で、よく…

【日刊 太宰治全小説】#261「人間失格」第三の手記 二

【冒頭】堀木と自分。互いに軽蔑(けいべつ)しながら附き合い、そうして互いに自(みずか)らをくだらなくして行く、それがこの世の所謂(いわゆる)「交友」というものの姿だとするなら、自分と堀木の間柄も、まさしく「交友」に違いありませんでした。 【結句】…

【日刊 太宰治全小説】#260「人間失格」第三の手記 一

【冒頭】竹一の予言の、一つは当り、一つは、はずれました。惚(ほ)れられるという、名誉で無い予言のほうは、あたりましたが、きっと偉い絵画(えか)きになるという、祝福の予言は、はずれました。 【結句】自分にとって、「世の中」は、やはり底知れず、おそ…

【日刊 太宰治全小説】#259「人間失格」第二の手記

【冒頭】海の、波打際、といってもいいくらいに海にちかい岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色の粘っこいような嫩葉(わかば)と共に、青い海を背景にして、その絢爛(けんらん)たる花をひ…

【日刊 太宰治全小説】#258「人間失格」第一の手記

【冒頭】恥の多い生涯を送って来ました。 【結句】つまり、自分は、女性にとって、恋の秘密を守れる男であったというわけなのでした。 「人間失格(にんげんしっかく) 第一の手記」について ・新潮文庫『人間失格』所収。・昭和23年3月28日に脱稿。・昭…

【日刊 太宰治全小説】#257「人間失格」はしがき

【冒頭】私は、その男の写真を三葉(さんよう)、見たことがある。 【結句】私はこれまで、こんな不思議な男の顔を見た事が、やはり、いちども無かった。 「人間失格(にんげんしっかく) はしがき」について ・新潮文庫『人間失格』所収。・昭和23年3月28…