記憶の宮殿

僕は、記憶の宮殿を、自由に旅する。太宰治が、ソウルフレンド。

【日めくり太宰治】6月7日

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6月7日の太宰治

  1941年(昭和16年)6月7日。
 太宰治 31歳。

 午前一時〇分、長女園子が、東京府北多摩郡三鷹下連雀百十三番地において誕生した。

長女・園子の誕生

 今日は、太宰の長女・津島園子(1941~2020)が生まれた日です。太宰31歳、妻・美知子29歳でした。
 ちょうど、美知子の妹・愛子が上京して来ていたため、色々と世話をしてもらいます。午前1時0分に生まれた女の子は、920(もんめ)(3,450ℊ)でした。

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  太宰は、生まれた女の子に「千代」という名前をつけたかったため、青森中学時代の同級生・阿部合成(あべごうせい)に断りの相談に行きます。阿部の妻の名前も「千代」だったため、同じ名前をつけることの断りでした。
 すると、千代は、「千代という名前は男運が悪いので、私も変えたいと思っている」と言うので、「それはいけない、それではどんなのがいいか」と相談します。千代は、「友人に園生という佳人がいるので、どうでしょう」と言うと、「竹の園生ではどうも」と言い、園子、里子、素子と名前をいろいろと書いていき、園子に決めたそうです。美知子の弟・石原明は、美知子が好きなピアニスト・井上園子に(あやか)ったような気がしたそうです。

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 実はこの時、太宰は師匠の井伏鱒二に、男の子の命名を頼んでいました。園子が生まれた同日、太宰は井伏に宛ててハガキを書いています。

  東京府三鷹下連雀一一三より
  東京市杉並区清水町二四 井伏鱒二

 ただいま、無事に生れました。女の子でした。せっかく名前まで考えていただいたのに、残念でございます。でも、この次は、きっと男の子を作らせますゆえ、どうかその時に下さいまし。母も子も、丈夫です。御安心下さいまし。まずは、第一に御報告申し上げます。園子と、つけようかと思って居ります。
               六月七日午前一時。
(大きい子供で、九百二十(もんめ)とか言っています。)

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 園子が7歳の時、太宰はこの世を去りました。

 園子は、1964年(昭和39年)、アジア初のオリンピックである東京オリンピックが開催された年、23歳で夫・津島雄二(旧姓:上野)と結婚します。太宰の長兄・文治は国会議員だったため、文治の紹介・お見合いで婚約に至ったそうです。当時、大蔵省の官僚だった津島雄二は、フランス・パリの日本大使館に勤務しており、挙式はパリで行われました。
 結婚して2年後、長男の津島淳(現・衆議院議員)が生まれ、その4年後に長女も生まれています。

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 園子は結婚後、本格的に油絵をはじめ、グループ展や東京銀座、青森市での個展も開催しています。

 また、太宰治賞や各地で開催される太宰治展などをはじめとする、太宰治関連の様々な事業に協力し、父・太宰治の功績を後世に遺すため、尽力しました。

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 しかし、今年2020年(令和2年)4月20日、残念な報道が流れてきました。

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 津島 園子さん(つしま・そのこ=作家・太宰治の長女、津島雄二元厚相の妻)20日午前1時58分、呼吸不全のため東京都内の病院で死去、78歳。東京都出身。葬儀は近親者で行う。喪主は夫雄二(ゆうじ)氏。後日、お別れの会を青森市で開く予定。園子さんは津島淳衆議院議員の母で、2016年に亡くなった作家の津島佑子さんは妹。

 突然の訃報でした。

 体調が優れず、入院されているというのは聞いていましたが、あまりにも唐突でした。6月7日の「日めくり太宰」は、園子さんの誕生記事にしようと決めていたのですが、記事の締めくくりが、このような展開になるとは想像していませんでした。
 センセーショナルな最期を迎えた太宰を父に持ち、様々な困難もあったと思いますが、父・太宰治の正の遺産、負の遺産を共に背負い、後世に伝えるべく遺したことは、偉業と言うほかありません。

 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 【了】

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【参考文献】
・『太宰治全集 12 書簡』(筑摩書房、1999年)
日本近代文学館 編『図説 太宰治』(ちくま学芸文庫、2000年)
・山内祥史『太宰治の年譜』(大修館書店、2012年)
・田村茂 写真『素顔の文士たち』(河出書房新社、2019年)
・HP「津島園子さん死去 作家・太宰治の長女」(2020年4月20日、JIJI.COM
 ※モノクロ画像は、上記参考文献より引用しました。
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