記憶の宮殿

僕は、記憶の宮殿を、自由に旅する。太宰治が、ソウルフレンド。

パンドラの匣

【日めくり太宰治】1月14日

1月14日の太宰治。 1946年(昭和21年)1月14日。 太宰治 36歳。 青森県金木町 津島文治方より 仙台市東三番丁 河北新報社出版局 村上辰雄宛 拝復、本日二千円たしかに頂戴(ちょうだい)仕(つかまつ)りました。受領書、別に同封いたしました…

【日めくり太宰治】1月3日

1月3日の太宰治。 1933年(昭和8年)1月3日。 太宰治 23歳。 袴(はかま)を着けて服装を改め、緊張した面持ちで、今官一とともに井伏鱒二を訪問。以後、疎開中を除き、井伏家参上が正月の恒例となった。同日、筆名「太宰治」を決定したと推定され…

【日刊 太宰治全小説】#208「パンドラの匣」十三

【冒頭】 謹啓。きょうは、かなしいお知らせを致します。もっとも、かなしいといっても、恋しいという字にカナしいと振仮名をつけたみたいな、妙な気持のカナしさだ。 【結句】 「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽(ひ)が当るようです。」…

【日刊 太宰治全小説】#207「パンドラの匣」十二

【冒頭】 昨日の御訪問、なんとも嬉しく存じました。その折には、また僕には花束。竹さんとマア坊には赤い小さな英語の辞典一冊ずつのお土産。いかにも詩人らしい、親切な思いつきで、殊(こと)にも、竹さんとマア坊にお土産を持って来てくれたのは有難(あり…

【日刊 太宰治全小説】#206「パンドラの匣」十一

【冒頭】 御返事をありがとう。先日の「嵐の夜の会談」に就いての僕の手紙が、たいへん君の御気に召したようで、うれしいと思っている。 【結句】 もっとも君は、既に、君の周囲に於いて、さらにすぐれた清潔の美果を味っているかも知れないが。 十月二十日 …

【日刊 太宰治全小説】#205「パンドラの匣」十

【冒頭】 拝啓。ひどい嵐だったね。野分(のわき)というものなのかしら。これでは、アメリカの進駐軍もおどろいているだろう。 【結句】 男って、いいものだねえ。マア坊だの、竹さんだの、てんで問題にも何もなりゃしない。以上、地獄の燈火と題する道場便り…

【日刊 太宰治全小説】#204「パンドラの匣」九

【冒頭】 一昨日は、どうも、つくし殿の名文に圧倒され、ペンが震えて文字が書けなくなり、尻切とんぼのお手紙になって失礼しました。 【結句】 マア坊の夢は悪い夢で、早く忘れてしまいたいが、竹さんの夢は、もしこれが夢であったら、永遠に醒(さ)めずにい…

【日刊 太宰治全小説】#203「パンドラの匣」八

【冒頭】 僕がいつも君に、こんな下手な、つまらぬ手紙を書いて、時々ふっと気まりの悪いような思いに襲われ、もうこんな、ばかばかしい手紙なんか書くまいと決意する事も再三あったが、しかし、きょう或るひとの実に偉大な書翰(しょかん)に接し、上には上が…

【日刊 太宰治全小説】#202「パンドラの匣」七

【冒頭】 さっそくの御返事、たのしく拝読しました。高等学校へはいると、勉強もいそがしいだろうに、こんなに長い御手紙を書くのは、たいへんでしょう。 【結句】 僕はみんなを愛している。きざかね。 九月二十六日 「パンドラの匣」について ・新潮文庫『…

【日刊 太宰治全小説】#201「パンドラの匣」六

【冒頭】 こないだから、女の事ばかり書いて、同室の諸先輩に就いての報告を怠っていたようだから、きょうは一つ「桜の間」の塾生たちの消息をお伝え申しましょう。 【結句】 冗談、失礼。朝夕すずしくなりました。常に衛生、火の用心とはここのところだ。僕…

【日刊 太宰治全小説】#200「パンドラの匣」五

【冒頭】 さっそくの御返事、なつかしく拝読しました。こないだ、僕は、「死よいものだ」などという、ちょっと誤解を招き易(やす)いようなあぶない言葉を書き送ったが、それに対して君は、いちぶも思い違いするところなく、正確に僕の感じを受取ってくれた様…

【日刊 太宰治全小説】#199「パンドラの匣」四

【冒頭】 きのうは妙な手紙で失敬。季節のかわりめには、もの皆があたらしく見えて、こいしく思われ、つい、好きだ好きだ、なんて騒ぎ出す始末になるのだ。なあに、そんなに好いてもいないんだよ。すべて、この初秋という季節のせいなのだ。 【結句】 それは…

【日刊 太宰治全小説】#198「パンドラの匣」三

【冒頭】 拝啓仕(つかまつ)り候(そうろう)。九月になると、やっぱり違うね。風が、湖面を渡って来たみたいに、ひやりとする。虫の音も、めっきり、かん高くなって来たじゃないか。 【結句】 その時から、どうも僕はへんだ。つまらない女なんだけれどもね。 …

【日刊 太宰治全小説】#197「パンドラの匣」二

【冒頭】 きょうはお約束どおり、僕のいまいるこの健康道場の様子をお知らせしましょう。 【結句】 まずは当道場の概説くだんの如しというところだ。失敬。 九月三日 「パンドラの匣」について ・新潮文庫『パンドラの匣』所収。・昭和20年11月9日頃に…

【日刊 太宰治全小説】#196「パンドラの匣」一

【冒頭】 君、思い違いしちゃいけない。僕は、ちっとも、しょげてはいないのだ。 【結句】 僕の事に就いては、本当に何もご心配なさらぬように。では、そちらもお大事に。 昭和二十年八月二十五日 「パンドラの匣」について ・新潮文庫『パンドラの匣』所収…